【アメオトノオト】『アイの歌声を聴かせて』音響調整話

今回はオススメの映画ではなく、今キている『アイの歌声を聴かせて』のムーブメントに便乗して、音響調整時の話しをしてみようかと思う。

『アイの歌声を聴かせて』
aスタジオ、cスタジオ/「アイの歌声が良く聴こえるかも音」【極音】【雨音】
https://res.cinemacity.co.jp/TicketReserver/studio/movie/2278

岩浪音響監督の付けた「アイの歌声が良く聴こえるかも音」、さらに【極音】と【雨音】にと付けられるものは全部付けとけと言わんばかりの豪華仕様となってしまった『アイの歌声を聴かせて』。

少しだけaスタジオの上映が決まった時の事や音響調整中の雨宮視点での話を交えつつ音響調整について語ってみたいと思う。

aスタジオの上映が決まり、岩浪さんを呼ぶにはちょっと時間が足らないねという事で、本当にリモートというか遠隔のやり取りでやるつもりだったのだが、Twitterで急に行く気満々になってしまっている岩浪さん。
「じゃあ今晩いくよ」※DMのやり取り原文ママ
友人宅にこれから遊びにいくわみたいなノリで本当にその日に来た。

いや、「了解ッス!」と当たり前のように受け入れている私も私だったのだが、そっちの方が面白そうだって理由でその日に予定していた仕事は全て次の日にした。

そしたら吉浦監督も一緒にお越しいただいて「皆、フッ軽にもほどがあるのでは?」と内心突っ込んでいたのだが本当にそんなノリで始まった音響調整。

いつも岩浪さんの作品は、時間短縮のために事前に調整を行っておき、岩浪さんに必要な部分の手直し指示を貰うという形なのだが、急に決まった今回は完全に無調整から作り上げていくパターンで行った。

「雨くんの好きにやっていいよ」

調整が始まった時に言われた岩浪さんのその一言がとても嬉しく、久々に気持ちにスイッチが入りとてもやりやすくなった。音響監督に限らず監督と言われる人達は技術面もだがやはり「人を使う」というのがとても上手いなと思う。

そして、どうしようかなと迷っていると、とても的確に「こうしてみようか」と指示を欲しいところでくれるので岩浪さんとの調整は自分のパフォーマンスを出しやすくとても楽しい。
それとちょっとだけスタジオで作った音を目指す中で、自分の色を入れられるのは技術職としては幸福な事でもある。

そんな中で音響調整が進むのだが、ほぼ終わりかけの段階になった時に私の中で「なんかもう一つ足らないな」と感じていた。そこで、岩浪さんにはちょっと黙って決まりかけていた調整値を崩し気味でアプローチを変えた部分があったのだが、たまたまそれがハマって、太鳳ちゃんの歌声でようやく鳥肌が立ってくれた。

正しいかはわからないが、せっかく音響監督と監督が来ているので「オリジナルから崩れたとしても鳥肌が立つ音にできたら良いな」というのが心の内にいつもあるので、これは個人的にとっても「決まったわ」とガッツポーズだった。

その上で岩浪さんから「オッケーこれでいこう」とすんなりオッケーが貰えた。
久々に手ごたえを感じ充実した仕事ができた気がする。aスタジオでできる最高の状態になったのではと自負している。

ここまでの事は私視点の話だが、もっと面白い話を9日のトークショーでは聴けるかもしれない。

そして今回改めて思った事は、制作側と映画館側がタッグを組むととても強いという事をどんどん広めたい。
これは作品のクオリティの向上にもつながり、そういった熱量の作品は自然と良さが伝わると思うのでお客様には120%の状態で楽しんで貰えると思うし、映画館で映画を観るという事の意味に応えられると思っている。
最終的には特別な音響調整をするのではなく、地盤から制作側と映画館側がお互いに歩んでいけたらなと思っていて、シネマシティならそれをする事ができると信じている。