【シネコンウォーカーコラム】『時をかける少女』(06)【極音】成功は「時を〝翔る〟→〝駆ける〟少女」にしたこと

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 シネコンウォーカー電子版の存在をもっと知っていただきたいのと、新作の宣伝もかねて、コラムだけ抜粋して毎月ご紹介。

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『時をかける少女』(06)

 細田守監督フィルモグラフィーの中でも突出したマスターピース。
 名作のリメイクは世界中で作られ続けているが、その多くがうまくいっていない中、抜群に成功したレアケースと言える。

 とにかくまず、ヒロインのキャラ変が素晴らしい。
 オリジナルが大人しく優しい、少し影もある優等生的性格だったものを、真夏の白雲そびえたつ青空のように、とにかく陽気でさばさばで、よく笑い、アクティブで、ドジっ娘でもある、現代的ヒロインに変更。

 この変更で、観客は始まって数分で真琴のことを好きになってしまう上に「恋には臆病」という側面が出始めると可愛さが激増。
 本作のアイディアの根幹をなす「タイムリープ」(リープは跳躍の意味)という偶然ヒロインに与えられることになる能力も、オリジナルではふわっと意識を失って気づいたら過去に戻っているという感じだったが、今作ではやったぜラッキーな能力ゲット、くらいの軽いノリ。
 テストのやりなおしとか、授業中の失敗を他人に押しつけるためとか、くだらないことにバンバン使っていく(笑)。


 しかも時間を跳躍するのは、オラーッと全力疾走し、行けーッと叫んで大ジャンプするという方法。そして過去に戻った瞬間、勢いあまって毎回ゴロゴロッと大転倒してどこかに激突。なんという陽キャ。思いついた人、マジ天才。

 この演出によって、タイムリープというものに新しい意味が付与されることになった。
 何か上手くいかなかったら、全力疾走してジャンプしてずっこけて、そしたら次はきっと上手くいく。何度だってやり直せばいい。それが思春期の特権だろう。

 この意味づけこそ、今作の成功の中核。キャラクターの性格と物語の意味をこのジャンプひとつで完全に表現してみせる。
 映画の本質とは「動く絵」なのだから、優れた作品は言葉を弄するのではなくこのように見せる。

 同時期に細田作品『サマーウォーズ』『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』も上映。

(C)「時をかける少女」製作委員会2006

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2023年7月7日(金)-20日(木) 2週間限定上映