そのスピーカーは、宙を自在に舞い、夜空に光粒を撒く、有翼の女神の名を与えられた。
世界を映し出す劇場の暗闇を飛翔する音は、透き通ったひずみのなさ、敏捷で優美な所作によって、強く感情を揺さぶる。
神々が愛想を尽かして天に去りゆく中、最後まで人間を信じて地上に残った、美しき響きを持つその女神の名は「ASTRYA/アストリア」。
星乙女、とも呼ばれる。
はじまりとその想い
このプロジェクトは、混迷を極めた。
シネマ・ワンが30周年、シネマ・ツーが20周年を迎える記念すべき2024年。
これを祝し、シネマシティが映画館音響シーンに衝撃を与えた、ラインアレイスピーカー導入のaスタジオを自ら凌駕することに挑む、という刺激的なアイディアは「シネマシティっぽい」などという軽口では簡単に済ませられないほど莫大な予算の決断を求められるが、コロナ禍で受けた壊滅的なダメージから再び立ち上がるためにも絶好の機会に思えた。
だがいざ取り組み始めると、問題が頻出する。
天井に何台ものスピーカーを吊ることになるための建築構造の問題、世界情勢の激変による流通への多大なる悪影響…etc.
次から次に、困難が立ちはだかってくる。
2025年の夏に完成を予定した計画は遅れに遅れ、1年を待つことに。
そのためにいくつかの周年企画は、一番の大花火を欠き、もう一歩煮え切らない形で終わることになってしまった。
しかしようやく今、ヴェールを脱ぐ。
想うだけでは、愛は伝わらない。
より混じりけなく作り手の意図を正確に映す劇場を。
映画館は、もっと面白くなれる。
bスタジオは何が変わるのか?
■フロントスピーカーを換装
Meyer Sound「ASTRYA-140」5台
■サラウンドスピーカーを増設
Meyer Sound「HMS-12」左右4台 リア5台 天井4台
Meyer Sound「HMS-10」左右8台 天井8台
■壁設置サラウンドサブウーファー(重低音専用)を増設
Meyer Sound「750-LFC」左右2台
■サブウーファー(重低音専用)を換装
Meyer Sound「2100-LFC」3台
■スクリーンを新調
Stewart「SnoMatte 100」(一般的なものの20倍もの価格の超高級スクリーン)
■スクリーンを拡大
左右に1.2m、上下に0.5m さらに湾曲スクリーンからフラットスクリーンへ。
なぜこの機種を選択したのか? 映写チーフ雨宮の狙い
aスタジオにラインアレイスピーカーのMeyer Sound LEOPARDを導入してからちょうど10年。
同じくMeyer Soundのサブウーファーの「1100-LFC」とともに打ち出した「映画館音響の新しいスタイル」を数えきれない映画ファンに楽しんでもらえた10年と思います。
そして、シネマワンとツーの30年と20年のアニーバーサリーイヤーのため、映画を観る事をさらに楽しんでもらうにはとbスタジオの改修を考えて新しいスピーカーを探していました。
そんな折にMeyer Soundがとてつもない映画館用のスピーカーを発表してきました。それが「ASTRYA-140」です。
今回の改修では立体音響【Dolby Atmos】も導入するにあたってMeyer Soundに拘らずに他のメーカーでもbスタジオと相性の良いスピーカーがないかと探していましたが、そんな浮気心を吹っ飛ばしてしまうくらい凄い良い音かつ探していた条件にぴったりのスピーカーで、これ以外には考えられないと決めたのが「ASTRYA-140」です。
映画の音で最も重要な音の一つとしてセリフ、つまり声の音があります。表現や感情を観客に伝えるには音にならないような声や張り上げた叫び声などいろんな声を再生できないといけません。
もう一つ重要な音が音楽です。音楽の音がしっかり再生される事によってそこに乗る感情や想いがより鮮明に受け取れて映画への没入感を高めてくれます。
そんな全てを叶えてくれてくれるスピーカーは本当になかなかありませんが、それを叶えてくれるのが「ASTRYA-140」でした。
【Dolby Atmos】といえば壁や天井にスピーカーがいっぱい取り付けられている事が特徴の一つです。
今回使用したのはaスタジオとcスタジオでも使われている本当に優秀なMeyer Sound「HMSシリーズ」のサラウンドスピーカーです。
より完全な音響空間を実現するために、可能な限りいっぱい取り付けました。
そして「ASTRYA-140」と音を揃えるためにこの同じ映画館用のHMSを選びました。
さらに【Dolby Atmos】には、サラウンドにサブウーファーを取り付けなければならないルールがあります。
そのサブウーファーにはMeyer Sound「750-LFC」という「1100-LFC」の子供のようなサブウーファーを使っています。
今回の改修で「ASTRYA-140」ともう一つ目玉となるのがサブウーファーです。
これにはMeyer Soundの「2100-LFC」を迷わず選びました。
最初に「2100-LFC」の音を聴いた時には、あまりに気持ちの良い低音に、満面の笑顔になってしまうほどでした。
どうしてもこの気持ちいい低音を皆様にも体験してほしかったのとハリウッドの試写室や劇場のパワーに負けないよう「2100-LFC」を選びました。
「ASTRYA-140」の半分は「2100-LFC」をベースとしているため音の相性もいいはずという狙いもあります。
今考えられる、これ以上にないだろうと思ったスピーカー達を使いシネマシティもやっと【Dolby Atmos】を導入することができました。ここに辿り着くまで本当に長かったです。
遅れた分を、圧倒的なクオリティで取り戻します。
実は、音も凄い進化ですが、映像も進化しています。
映像を綺麗に写す事だけを目的としてシネマ・ツーの特徴でもあった湾曲スクリーンを捨ててプロジェクタのレンズと相性の良い平面スクリーンに変更しました。
それと、もう一つシネマ・ツーの特徴に「フロントのスピーカーが見えている」というのがありましたが、スクリーンサイズも少しだけ大きくしたのと、スピーカーの音を揃えるために今回は隠してしまいました。
もちろんスクリーンは最高級のスチュワートスクリーンです。
今まで以上に大きく美麗な映像をお届けします。
シネマシティで観た映画がずっと皆様の心に残ると良いな、と思い頑張りすぎちゃったので、新生bスタジオを是非いっぱい体験してください。

