世界の映画祭の常連であり、日本を代表する映画監督である是枝裕和。
そのフィルモグラフィの多くで「家族」をテーマに据え、必然に濃厚にならざるを得ない関係性を扱いながらも、淡麗な筆致で人の心情の多面さを描き、情緒に耽溺せずに「問い」を放つ。
この度、能登半島地震の被害にあった輪島支援として特別上映される、輪島を舞台とした是枝監督長編デビュー作『幻の光 デジタルリマスター版』をシネマシティでも。
テレビマンユニオンの合津直枝プ
さらに、多彩な作品群の中から加えて3作品を併せて上映する特集を開催。
第71回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作『万引き家族』、第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞『そして父になる』、そしてこの後に続いた樹木希林を起用した初の作品で、その震撼させられる魅力を引き出した『歩いても 歩いても』。
監督の全容を知るには足りないけれども、描き続けているものを知ることには不足ない4本。
このうち『そして父になる』と『歩いても 歩いても』は貴重な35mmフィルム上映で。
美麗な映像をスクリーンで堪能できる多くはない機会、お見逃しなく。
<能登半島地震 輪島支援 特別上映>幻の光 デジタルリマスター版
2024年9月6日(金)公開
出演■江角マキコ/浅野忠信/柏山剛毅/渡辺奈臣/吉野紗香/木内みどり/大杉漣/内藤剛志/柄本明
芥川賞作家、宮本輝の同題の原作を、江角マキコ主演で映画化。
その息を飲む陰翳の美しい撮影は、ヴェネツィア国際映画祭金のオゼッラ賞を受賞した。
12歳の時に祖母が失踪。
25歳の時に息子を残して夫が自殺。
そんな喪失を抱えた女性が、奥能登にある村に嫁ぐ。新しい生活は、彼女に何をもたらすか――。
万引き家族 (18)
2024年9月20日(金) – 26日(木)
出演■リリー・フランキー/安藤サクラ/樹木希林/松岡茉優/城桧吏/佐々木みゆ/池松壮亮/柄本明
ある貧困家庭の、盗みに手を染めながらもしぶとく強く生きる姿を描いた衝撃作。
ネット社会に特に顕著になってきている、単純な「悪」単純な「善」についての短絡的な判断に疑問を突きつける。
祖母の年金をあてに暮す、5人の家族。父はろくに仕事もせず、息子を使って万引きを重ねる。
そんなある日、父は団地の廊下で震えていた幼い少女を匿うが…。
そして父になる (13) 35mmフィルム上映
2024年9月27日(金) – 10月3日(木)
出演■福山雅治/尾野真知子/リリー・フランキー/真木よう子/樹木希林/夏八木勲
産院での子どもの取り違えが、6歳になった時に発覚する――。
交錯することもなかったであろう、高級マンションに住むエリート家族と、町の小さな電気店の家族。
奇才ピアニスト、グレン・グールドの奏でるJ.S.バッハ「ゴルトベルク協奏曲」のアリアが流れるのも美しい。
歩いても 歩いても (08) 35mmフィルム上映
2024年10月4日(金) – 10日(木)
出演■阿部寛/夏川結衣/YOU/高橋和也/田中祥平/樹木希林/原田芳雄
なんという物語だろう。なぜこんなにも心をえぐられるのだろう。
夏の日に集った、元開業医の家族。訪れたのは次男の家族、そして長女の家族。
それはこの国のどこにでもあるような風景。
だがその日は、この家族にとって特別な日だった。長男が水難事故により亡くなった日。
それから15年が経とうとしていたが、平穏を取り繕う中にも、いまだ大きな喪失を抱えていた…。
ゴンチチによるウクレレの音色の、穏やかにノスタルジックで、もの哀しい響きがいつまでも心に消え残る。