季刊で劇場にて無料配布している「シネコンウォーカー」。
次に何観る?っていうときに役立つ、最新映画情報が紹介されているテイクフリーのミニ雑誌で、電子版もリリースされている(下記バナーをクリック。常にHPトップにバナーあり)。
ここで創刊当時から、シネマシティ企画担当の遠山が連載している映画紹介コラム「TO SEE OR NOT TO SEE」。
シネコンウォーカー電子版の存在をもっと知っていただきたいのと、新作の宣伝もかねて、コラムだけ抜粋してご紹介。
『ニュー・シネマ・パラダイス』35mmフィルム上映
2024年4月12日(金) – 25日(木) ※好評につき1週延長
もうデジタルの画面しか見なくなって久しい。
スマートフォン、パソコン、テレビ、街にあふれるサイネージ。
そのヴィヴィッドでシャープで精細な画面は、今後8K、16Kとますますその度合いを高めていくことだろう。
日本庭園、とりわけ茶庭とか枯山水と呼ばれるデザイン性の高い庭には、定番のモチーフとして「鶴島/亀島」というものがある。石や草木にて鶴亀を模すというものであるが、甲羅状の盛土があったり、長い首の形の石があったりはするものの、多くは「言われてみれば…」レベルの抽象性である。
だがそれゆえに古いものなら三百年、四百年と人心を捉えてきたのだ。もしギリシャ彫刻のように、まるで生きた鶴亀がそのまま石化したような具体性で置かれていたとしたらどうだろう。それはなんとつまらないことか。余地/遊びなきものは、想像を、神秘を奪う。
映画館を描いた映画の最高峰と言っていい『ニュー・シネマ・パラダイス』をシネマシティでは35mmフィルムにて上映する。かつて主要メディアだった時代の映画館への郷愁が描かれる名作。
舞台こそイタリアはシチリア島の片田舎だが、かつて世界のあちこちにあったであろう普遍的な映画館の姿と思わせるものがある。
シネマシティは鑑賞の質を上げることこそ映画ファンがもっとも望むことだと、映像にも音響にも過剰なまでのコストと手間を掛けているが、しかし時折、35ミリフィルム映写機を回したときのこの筆舌に尽くし難い感覚はなんだろう。
灯りが落ちて、暗闇にかすかに聞こえるカラカラと回るリールの音。
やがて闇に浮かび上がる薄絹をかぶせたような画調。
映写機は徹頭徹尾、科学の産物なのに、この魔術性はいったいなんなのだ。
僕らは何か、映画にとって最も大切なものを取りこぼしてしまったのではないか、と頭をよぎる。
だが時は逆さには流れない。あと何度、フィルムの幻術に浸れるだろう。
それはおそらくは、両手の指で数えられるほどなのだろう。
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