季刊で劇場にて無料配布している「シネコンウォーカー」。
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ここで創刊当時から、シネマシティ企画担当の遠山が連載している映画紹介コラム「TO SEE OR NOT TO SEE」。
シネコンウォーカー電子版の存在をもっと知っていただきたいのと、新作の宣伝もかねて、コラムだけ抜粋してご紹介。
『デューン/砂の惑星<4Kデジタルリマスター版>』
リンチの欠片への偏愛 2024年8月2日(金)公開
「失敗作」というレッテルつきで、本作は語られることが多い。
だが映画ファンならこれには気をつけたほうがいい。
例えば黒澤明監督のキャリア晩年作、『ゴッドファーザー PART III』、89年の勝新太郎主演・監督の『座頭市』、『エイリアン3』。
上がりすぎた期待、時代の空気、作品外の様々なノイズによって批評は大きく左右され、過剰に叩いてしまう。
時間がそれらを洗い流してしまってから見直すと、人の評価というものがいかにいい加減かわかるというものだ。
最初に「デューン/砂の惑星」の映画化を試みたのは『エル・トポ』で知られる異端の作家アレハンドロ・ホドロフスキー監督だった。だがその途轍もなく膨らみ過ぎた構想から頓挫。
次にリドリー・スコット監督に話が行ったが、これも予算面でボツ、最後にデイヴィッド・リンチ監督に回ってきた。
郊外や小さな町に潜む狭く深い闇を描いて、類例なき世界を生み出す映像作家に、神話的SF叙事詩風の原作は合うはずもなく、また長大で複雑な物語は、1本2時間ちょっとの映画のサイズには不釣り合いに過ぎた。
同じ分量をヴィルヌーヴ監督版は2本5時間半程度費やしている。
よってダイジェスト的に駆け足で語られるので、人物の掘り下げが甘く、話がわかりにくいと言われてしまうところだが、今現在、そこはヴィルヌーヴ版で補えばいい。そしてリンチの隠しきれず横溢したヴィジュアルセンスに耽溺すればいいのだ。
今作の衣装、美術、メカやプロップのデザインには40年を経た今なお通用するであろうレベルの優れたものが散見される。
奇怪で異形なものを創り出す天賦の才も原作を越えて発揮され、ギルド・ナビゲータという謎の宇宙生物、ハルコンネン男爵の顔にあるグロテスクな皮膚腫瘍などはリンチの創造である。素晴らしい。
ヴィルヌーヴ版と総合点では比ぶべくもないが、今作には今作しかない突出した魅力があるのだ。
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