【シネコンウォーカーコラム】『氷の微笑 4Kレストア版』(R18+)【極音】強力なるワンシーン。それが映画の寿命を決める。

2023年6月17日

 原則毎月初週の金曜日から劇場で無料配布している「シネコンウォーカー」。
 次に何観る?っていうときに役立つ、最新映画情報が紹介されているテイクフリーのミニ雑誌で、電子版もリリースされている(下記バナーをクリック。常にHPトップにバナーあり)。

 ここで創刊当時から、シネマシティ企画担当の遠山が連載している映画紹介コラム「TO SEE OR NOT TO SEE」。
 シネコンウォーカー電子版の存在をもっと知っていただきたいのと、新作の宣伝もかねて、お試しでコラムだけ抜粋して毎月ご紹介。

『氷の微笑 4Kレストア版』【R18+】上映中

 ヒットする歌には、必ず口ずさみたくなる「サビ」がある。
 これは映画も同じ。

 「サビ」を生み出す名手といえばスピルバーグ監督が代表例で『E.T.』の光る指合わせのシーンや『ジョーズ』の背びれ、『ジュラシック・パーク』の恐竜が歩く震動で水面に波紋が立つところなど、一度観たら忘れられない映像を次々と生んでいる。
 
 歌もそうだが、AメロもBメロも歌詞の内容も忘れてしまっても、ワンフレーズ強いものがあれば一生口ずさめてしまう。映画でも重要なのは「サビになる画」であって、これを生み出せれば歴史に残る。物語なんてどうせやがて忘れてしまうのだ。消え残るのは「画」だ。

 『氷の微笑』は当時大ヒットし、数多のパロディを生み出した90年代を代表するサビ映画のひとつ。
 知的でクールで強気の美貌を持つ大変にエッチなお姉さんが、下着をつけずにミニタイトワンピースで、おっさんたちの前に座って挑発的に美脚を組み替えてみせる。

 このシーンはシャロン・ストーンの類い稀な才能と相俟って、あまりにも強力なパンチで世界中をノックアウトした。

 今作の監督ポール・バーホーベンはやはり抜群にサビ作りが上手い監督のひとり。『ロボコップ』『トータル・リコール』『スターシップ・トゥルーパーズ』と代表作をあげるだけで「画」が浮かんでくる作品だらけだ。

 とはいえ『氷の微笑』はそのワンパンチだけの作品ではなく、実はミステリーとして複雑な構造で観客を煙に巻く、なかなか良く出来た脚本なのだ。エロだけでヒットを作れるほど、世の中は甘くない。倒叙ミステリー式に始まって、二転三転に被疑者が変わっていく驚き。逆に捜査する刑事が悪女に洗脳されていくスリル。

 そして巨匠ジェリー・ゴールドスミスが手掛ける音楽も聴きどころで、作品のケレン味をさらに濃厚にする大仰っぷりが楽しい。
 4Kレストアによって鮮明化したことで30年前には観られなかった箇所はどうなのか、凝視せよ。

『氷の微笑 4Kレストア版』【R18+】 https://res.cinemacity.co.jp/TicketReserver/studio/movie/2824

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