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ここで創刊当時から、シネマシティ企画担当の遠山が連載している映画紹介コラム「TO SEE OR NOT TO SEE」。
シネコンウォーカー電子版の存在をもっと知っていただきたいのと、新作の宣伝もかねて、お試しでコラムだけ抜粋して毎月ご紹介。
『氷の微笑 4Kレストア版』【R18+】上映中
ヒットする歌には、必ず口ずさみたくなる「サビ」がある。
これは映画も同じ。
「サビ」を生み出す名手といえばスピルバーグ監督が代表例で『E.T.』の光る指合わせのシーンや『ジョーズ』の背びれ、『ジュラシック・パーク』の恐竜が歩く震動で水面に波紋が立つところなど、一度観たら忘れられない映像を次々と生んでいる。
歌もそうだが、AメロもBメロも歌詞の内容も忘れてしまっても、ワンフレーズ強いものがあれば一生口ずさめてしまう。映画でも重要なのは「サビになる画」であって、これを生み出せれば歴史に残る。物語なんてどうせやがて忘れてしまうのだ。消え残るのは「画」だ。
『氷の微笑』は当時大ヒットし、数多のパロディを生み出した90年代を代表するサビ映画のひとつ。
知的でクールで強気の美貌を持つ大変にエッチなお姉さんが、下着をつけずにミニタイトワンピースで、おっさんたちの前に座って挑発的に美脚を組み替えてみせる。
このシーンはシャロン・ストーンの類い稀な才能と相俟って、あまりにも強力なパンチで世界中をノックアウトした。
今作の監督ポール・バーホーベンはやはり抜群にサビ作りが上手い監督のひとり。『ロボコップ』『トータル・リコール』『スターシップ・トゥルーパーズ』と代表作をあげるだけで「画」が浮かんでくる作品だらけだ。
とはいえ『氷の微笑』はそのワンパンチだけの作品ではなく、実はミステリーとして複雑な構造で観客を煙に巻く、なかなか良く出来た脚本なのだ。エロだけでヒットを作れるほど、世の中は甘くない。倒叙ミステリー式に始まって、二転三転に被疑者が変わっていく驚き。逆に捜査する刑事が悪女に洗脳されていくスリル。
そして巨匠ジェリー・ゴールドスミスが手掛ける音楽も聴きどころで、作品のケレン味をさらに濃厚にする大仰っぷりが楽しい。
4Kレストアによって鮮明化したことで30年前には観られなかった箇所はどうなのか、凝視せよ。
『氷の微笑 4Kレストア版』【R18+】 https://res.cinemacity.co.jp/TicketReserver/studio/movie/2824
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