立川シネマシティの映写チーフ、雨宮が【雨音 AMEOTO】のサインをつけた、個人的に音推しの作品についてコメントしていく【アメオトノオト】。
『土を喰らう十二ヶ月』
kスタジオ/上映中
https://res.cinemacity.co.jp/TicketReserver/studio/movie/2546
音で推したい映画を紹介する【アメオトノオト】で意外かもしれませんが、『土を喰らう十二ヶ月』はオススメです。
派手な音はなく、淡々と山奥の生活の音が再生されます。そしてその音は、日本人であれば懐かしいと思ったり、落ち着くと思えるそういった生活音を堪能できます。
特に調理の音や食事の音は観ている側のお腹をとても刺激するほど良い音がするので、空腹の鑑賞は避けた方がいいでしょう。
肉汁がいっぱいとかそういった分かりやすい「美味しそう」ではなく、漬物やお味噌汁を食べる音で涎が口の中に溢れてくるのは日本人である証拠ではないかなと思います。
そして日本の四季を感じる自然の音もたくさん入っており、映画を見るだけで一緒にそこで1年間生活しているような気持ちにさせてくれます。音で思い出す四季の感覚はまた面白いのではないかなと思います。
ここまで五感を刺激してくるのは、良い音質で収録されている証ではないでしょうか。
音の作り方ですが、狙って作ったかどうかはわかりませんが、基本画面の中央で音を感じます。音の広がりはあまり感じません。普通の映画であれば、もうちょっと広げてもいいなぁと思うところですが、この映画はこれが大正解な気がします。サラウンドとかが入ってないわけではないのですが、話と噛み合って質素な生活を感じる事ができ、必要な音だけを感じ取れる作品にマッチした素晴らしい音だと思います。
『すずめの戸締り』や『ブラックパンサー』ももちろんおすすめできますが、このような邦画も如何でしょうか。